とあるお寺さんの古い掛け軸の仕立て直しをしていたところ掛け軸の上に付く棒(半月・八双などと呼びます)に表具師の名が書かれておりました。
半月・八双や軸棒は最終的に裂地で覆われるので、その見えないところに表具師の名を書き込むことは稀にあります。
当店でも大きな涅槃図を表装させていただいたときは、それまでの努力の証に、つい軸棒に名を入れたくなるものです。今回、名を書かれていた表具師さんもそんな気持ちがあったのでしょう。
しかも、面白いことにこの表具師さん、どうやら高野山の人らしく書かれた内容を読みますと
「安永○申 四月吉日 高野山 表具屋 ○右衛門」
と書かれているようです(○印のところは解読できませんでした)
安永はどうやら1772年~1781年までを指すようで江戸中期でしょうか。
さらに申のつく年が安永5年の1776年になります。
当時、高野山に表具師は当然居たのでしょうが実際存在した形跡を見るとなんだか感動したり…
240年ほど前の大先輩が行ったであろう表装の跡をじっくり観察させていただきながら同じ工程を踏んでいくのでした。