大きな爪あとを残して梅雨が明けました。被災された方々が一日も早く平穏な生活が戻りますよう、お祈りしております。近年、この時期の雨の降り方がおかしくなってしまいましたね...
さて、皆さんはお刺身に添えられたツマや海藻サラダに入っている赤紫色の細長い海藻をご存知でしょうか。あれフノリって言うものです。乾燥タイプも売っています。
で、その食品であるフノリは表具でも使われます。私は食べられるもので作業をしていた事実を知ったとき軽い衝撃を受けたことを覚えています。
表具に使う場合は、まず乾燥された状態のフノリを水で戻し煮ます。(下画像が乾燥フノリ)
そして煮出した液を濾します。するとトロトロとした液体が採れます。
このフノリ液は表具で仮接着に使用されます。たとえばボロボロになった本紙の裏打ち紙を取り除く際、本紙がバラバラにならないように表面に和紙をフノリで貼り付けます。この作業により裏打ち紙がなくなった後もバラバラになることなく形を保つことができます。フノリで貼った和紙は乾燥してからも加水することで簡単にめくることができます。
また茶室の壁に低く和紙を貼る「腰貼」はフノリを使い貼ります。フノリを使うことで土壁の剥がれ防止の効果があるのです。
フノリの歴史は古く、表具以外でも活躍しております。特に織物の糊付けに使用されたことからフノリは漢字で「布海苔」となったそうです。
また相撲力士の廻しに付ける紐(さがり)は十両以上になるとフノリで固められます。各場所開催中、テレビで早い時間の取り組みを見ておりますとまだフノリで固められていない紐をした力士が見られます。他にもシャンプーや石鹸などになったりと様々な使い方をされています。
しかしフノリの採取は今でも手摘みで採られており、採取量も多いわけではありません。たくさんの用途があるけど希少な万能選手なのです。