先日、知り合いの方から薄緑色の繭をいただきました。貴重なものだそうです。
普段、我々がとてもお世話になっている絹糸は家畜化されたカイコガ(家蚕)が作る白い繭からいただいています。このカイコガは人の手無しには生きていけない野性を忘れてしまった子なのです。古代中国で養蚕が始まり、やがて日本に伝わり卑弥呼の時代からずっと絹糸を提供してくれています。
変わってこの度いただいた薄緑の繭はヤママユガの繭で野生の子なのです。桑の葉を食べるカイコガと違いヤママユガはクヌギやコナラの葉を食べて大きくなり、やがて薄緑の繭を作ります。たまに山の中で、この薄緑繭を見つけられるようです。今は長野県などで人が管理しながらヤママユガの養蚕をされていますが、その管理がとても難しくカイコガのようにはいかないみたいです。
カイコガ繭が家蚕と呼ばれるのに対し薄緑のヤママユガ繭は「天蚕」と呼ばれます。他にもヤママユガの仲間が作る繭で黄色や薄茶の繭があり、それぞれ「柞蚕(さくさん)・クス蚕」と呼ばれます。繭って意外とカラフルなんですね。
天蚕からも糸は作れるようですが、なかなか高度な技術がいるようです。しかも取れる糸は家蚕と比べて半分ほど。それでも天蚕の糸は綺麗な光沢のある薄緑をした糸になり「繊維のダイヤモンド」なんて呼ばれるほど美しい糸に仕上がります。我が家の繭はダイヤモンド原石状態ではありますが、この繭の背景エピソードを知れて、このままでも十分に楽しませてくれます。