新年になりもう一週間が経ちました。私はもっぱら食べ正月でした。七草でおなかを休ませなければ…
さて今回紹介するのは、この道具。
これは「打ち刷毛」といいます。シュロやクロツグなどヤシ科の植物を束ねて作られます。刷毛とはいっても、とても毛束が厚く撫でるためのものではないです。打ち刷毛は束ねた毛先で和紙を叩くように使います。
軸装では本紙に最初の肌裏打ちをして、それ以降の裏打ちの度にこの打ち刷毛を使って叩き込みを行います。
なぜ叩く作業が必要なのか。いくつかの効果が挙げられています。
掛け軸は巻くという動作があるため、しなやかに仕上げることが重要になります。しなやかに仕上げようと、上質な和紙を濃度の薄い糊で貼り合わせていくのですが薄い糊だと接着が弱く剥がれる可能性があります。
そこで、この打ち刷毛で叩き加圧することで 和紙の繊維が絡まり、薄い糊でも十分な接着を可能にします。そして、叩くことで小さな窪みができます。
これは打ち刷毛が当たった箇所で、その箇所の和紙が加圧で薄く圧縮もしくは小さく穴が開きます。このことが更にしなやかさを加えてくれます。後いくつか効果あり…
しかし叩く力加減を間違えると本紙まで貫通します。かといって弱すぎても十分な接着ができないので適切な力加減で叩く訓練が必要です。
打ち刷毛は、そこそこの重さがあり、それを何十回と叩く動作をしなければなりません。しかも手で挟むように持ち、ブレないようにしっかり握りながら。そりゃもう腕と握力はパンパンになります。だから右左両腕で叩けるようになり、右腕が疲れたら左腕と交代しながら叩きます。少し大きな掛け軸になりますと笑えるほどの回数を叩いています。一度、回数カウントしている動画撮ってみたいんですよね。