6月になり、コロナ禍も少し落ち着いてきました。高野山は少しずつ、参拝の方々が増えてきたように思います。町には燕の子育ての姿が見られ、雛が一生懸命に巣から顔を伸ばし餌をねだる姿が可愛らしいです。
掛け軸には、「風帯」と呼ばれる燕と関係のあるパーツがあります。
掛け軸の上部から垂れている帯が風帯です。別名「驚燕」といいます。昔、中国では掛け軸を屋外で鑑賞したそうで、その時この風帯が風でなびくことで掛け軸に近づく燕を追い払ったそうです。
また、風帯は御簾に見られる”巻き上げた御簾を固定する金具に付ける装飾房”から来たものという説もあります。
風帯は、二枚の裂地を重ね、糸を見せないように縫い合わせて作ります。そして先端付近に「露(つゆ)」と呼ばれる飾り糸が付きます。
掛け軸の形には大きく分けて真・行・草と三段階の仕立があります。そして仕立ごとに風帯の形も少し変わります。真は最も格の高い形になり、風帯は裏の裂地を少し大きく取ってあり、表から見たとき細い筋を廻したように見えます。
行は真に次ぐ仕立で、風帯は裏の裂地が少し小さくなります。風帯裏の裂地は掛け軸の天地の裂地と同じものを使います。
草は行に次ぐ仕立で、行の形と同じ形式で風帯を作りますが、帯を作らずに細長い和紙を貼る場合もあります。この和紙を貼る風帯は茶道に用いられるような”茶掛”によく使われます。
今となっては燕を驚かすことは、なくなった風帯ですが一本作るのに手縫いでなかなか手間がかかっております。大切に扱ってあげてください。ちなみに掛け軸を巻き収納するとき、風帯は付け根あたりで内側に折れるようになっております。折ってから巻いていただくと綺麗に収納できます。