今月18日は十三夜でした。十五夜のお月見をしたら十三夜のお月見も、したほうがいいと最近知りました。日本では、お月さんに兎を見ますよね。これはインドの「ジャータカ」という仏話からきたものらしく、ざっくりいうと「修行する動物たちを試した帝釈天が兎の慈悲深い行動を皆に見せるため月に映した」から月に兎というわけです。
中国で兎は縁起の良いもので、裂地の文様でも見ることができます。有名なのが「花兎(はなうさぎ)」と呼ばれる文様です。
花樹の下に振り返った兎の組み合わせがよくある構図で、文様自体は画像のようにカマボコの断面図みたいな形(作土文)をしています。
花兎文は鎌倉時代~室町時代にかけて禅宗と一緒に伝来しました。その時、中国からの影響を受けた寺院建築では「瓦燈窓(かとうまど)」と呼ばれる装飾が見られ、やがて茶室にも「火灯口(かとうぐち)」という名で取り入れられます。
この火灯という形が花兎文様の作土文に似ており、また火灯(かとう)に花兎(かと)を当て字したのが由来という説もあり、花兎は禅や仏教とその建築様式の要素が混ざった文様なんだと思います。そんな花兎は、茶室で掛ける軸の仕立によく使用されます。
ほぼ同じ文様で「角倉金襴(すみのくら金襴)」という文様があります。これは、安土桃山時代の豪商「角倉了以」が好んだ裂地のことです。花兎金襴との違いは、本当に分かりにくいですが、角倉金襴の方が兎や花樹が具体的に表現されているように思います。花兎文様を見かけたときは「果たして花兎か、角倉か」と頭を悩ましてください。