高野山は春の季節を思わせる日が増えて、寒い冬もようやく終わりそうです。
当店は、お大師様のお膝元ということもあり、四国八十八ヶ所霊場の御朱印軸などの表装をご依頼くださるお客様がよく来られます。御朱印軸の裂地に昔から使われている雲文様の裂地があり、その文様についてのお話。
まず、雲を模した文様は「瑞雲」とも呼ばれ吉祥文とされています。実際に気象現象で瑞雲や彩雲と呼ばれる現象があり、この雲が発生すると吉兆と言われています。私も一度だけ見たことがありますが、雲が虹色に輝いて綺麗なものでした。
また日本古来の信仰に「山上他界」という死生観があり、亡くなった方々は山の上の遥か彼方に旅立ち、そこに極楽浄土があると考えました。よって山の遥か上を象徴する雲に極楽浄土を連想したようです。
さて今回の話題の裂地の初めは「霊芝雲」です。
霊芝はサルノコシカケの仲間で別名「万年茸」中国では不老長寿の薬草とされ古くから重宝されました。そんな霊芝に似た雲の文様である霊芝雲を繋いだ裂地が「富田金襴」です。
富田金襴は、安土桃山時代の武将「富田左近知信」が豊臣秀吉から拝領し、愛蔵したことからこの名で伝わったそうです。よく似た裂地に「嵯峨金襴」があり、こちらは仏日常光国師の袈裟裂として知られています。
次に紹介する文様が「四つ手雲」です。名の通り雲文から四方にたなびく雲が手のように出ています。これは瑞雲を文様化したであろうもので、大陸から影響を受け日本で成熟した「雅楽」で使われる衣装にも、この文様が見られ中国文化の名残が見られます。
今回紹介した文様が御朱印軸などでよく使われてきた裂地ですが、文様一つ一つの意味が吉祥や極楽浄土、不老長寿と仏教に関連する意味合いの文様が多いことがわかりました。
これから良い気候が増えてきます。青空の下、気持ちよさそうに浮く雲を見つつ、のびのびとどこか遊びに行きたいものです。