10年、20年前と比べると高野山も暑い日が増えました。それでも夜はひんやりとした風が吹くところを見ると、さすが高野山となります。さて本日は屏風裏によく使われる文様「雀形(すずめかた)」について
全体的には七宝繋ぎの文様で菱形の花文を中央に、周りに対の雀を配した文様です。使われだしたのは、とても古いようで鎌倉時代、公家調度品の屏風裏に見られたそうです。しかし、そのころの雀形は今の文様とは少し違いがあり、鳥の種類が違うように見られます。
古くに見られる雀形は鳥文様が「尾長鳥」で鳳凰のような鳥が対に描かれています。この文様は「鳥襷紋(とりたすきもん)」といい、公家男子の衣服の一種「指貫袴(さしぬきはかま)」でよく見られた文様でした。このことから公家調度品の屏風にも使われ始めたようです。それが鳥の種類が雀に変わり雀形と呼ばれているようです。実際の雀は田畑の虫を食べてくれることから屏風裏に雀を描くことで虫がつかないなどと、おまじないのような考えもあったそうです。
歌川国貞の作品「雀形屏風の張交」ではまた変わった雀形が見られます。
人物画の周りに雀形の版木を押してあります。この雀形は中央に向かって雀が向き合っている形です。
今日では、屏風裏用に雀形文様を押した紙が売られており、緑地の和紙に雲母摺りされています。さらに高価なものになると鳥の子紙に雀形文様を手摺りした「京からかみ」を使用します。少し前までは、屏風裏は「ハナ色」と呼ばれる地色に文様を押したものが多かったそうです。今日の緑地和紙やハナ色など青系は、藍染の色由来が多いです。藍染されたものは、防虫効果を期待され屏風を虫から守る一助になっています。
ハナ色など藍由来の色も興味深い話があり、次回載せられればと思っております。