暑さはすっかり落ち着き、高野山は間もなく赤や黄色で染められる季節になります。今回は「ハナ色」という色について調べてみたのですがなかなか面白いことがよくわかりました。
屏風や額の裏に貼るものでよく使われるのが雀形を押した和紙です。この紙の地色は見た目緑色の和紙ですが、表具業界ではよく「ハナ色」と表記されます。
ハナ色をインターネットで検索してみると青系の色が出てきますが、緑系の色は見当たりません。ハナ色の素となる一つに露草の花から取った色があります。
もう一つは「縹色(はなだいろ)」から名前が変わったものです
我々の良く知っている藍色は昔「縹色」と言われており色の濃さで深縹、中縹、次縹、浅縹と分けられていました。それが江戸時代頃に、はなだ色からハナ色となり伝わりました。なので昔、この青はいわゆる藍色とは別物でした。
では昔の藍色はどんな色を指していたのでしょう。
平安時代の格式を編纂した書物「延喜式」この中の項「縫殿寮 雑染用度条」には当時使われていた色名と色を作るためのレシピが書いてあります。
雑染用度条に深藍色という色があります。これは蓼藍(たであい)から作る青色と黄檗(きはだ)の黄色を重ね染めて、青みがかった緑色をしています。この色合いが昔の藍色でした。
ではなぜ我々の想像する藍色ではなく緑っぽい青が藍色と呼ばれていたのでしょうか?
一説には山藍の色を模しているのではという考えがあります。
日本では古くから藍染をしてきましたが大陸から蓼藍が伝わるまで自生している山藍を使った藍染が行われてきたそうです。しかも採取した山藍の葉を布に摺り付けて染める「摺り染」という原始的な染め方で、山藍の色は定着しずらく、すぐに色落ちしたそうです。
しかし山藍色は神事にも使われるものだったらしく蓼藍が普及してからは山藍色を再現すべく蓼藍と黄檗の重ね染めが行われたのではと一説にあります。
まとめますと元々の藍色は緑っぽい色
我々の想像する藍色は元々縹色、転じてハナ色
現在藍色といえばインディゴブルーの青色
これらがごちゃ混ぜになって表具的表現の「ハナ色」が完成したのではと自論を展開してみました。
あくまで自論ですので真偽は保証できません。しかし一つの色でこれだけ深堀出来る。楽しくないですか?