表装に使われる和紙紹介【高野山表具加勢田芳雲堂】

表装に使われる和紙

表装について一覧

表具では、あらゆる和紙が使用されます。
工程ごとに要求される特性を持った和紙を表具師は選ばなければなりません。
その和紙の中でも特に多く使用されるものを紹介していきます。

【薄美濃紙】

原料は楮(こうぞ)で 岐阜県南部で造られており名称もその地方名から来ております。
表装に用いる薄美濃紙には安価なものから最高級品まであり、原料が楮(こうぞ)のみで漉かれる紙は「生漉き」と呼ばれます。
中でも伝統的な製法・用具による、那須地方の楮のみで漉かれる「本美濃紙」は重要無形文化財に指定されています。
薄美濃紙は乾湿の影響による伸縮が少なく 丈夫で均一な紙面の美しい紙です。
このことから表装において、作品(本紙)への和紙による最初の裏打ち「肌裏打ち」に多用されます。
当店では本美濃紙とまではいかないものの使用する薄美濃紙は「生漉き」の高級ランクの美濃紙を使用しております。

薄美濃和紙

【美栖紙】

原料は楮(こうぞ)で奈良県吉野地方で造られ三栖紙とも呼ばれます。
この紙は肌裏打ちを終えた作品(本紙)にしなやかさを与えつつ厚みを調整する増裏と呼ばれる裏打ちに使用します。
美栖紙の製造の特徴は、紙を漉く前に胡粉(貝殻を砕いた粉)を入れるところです。
さらに、漉きあげた湿紙を直接干板に伏せ、乾燥させる工程も特徴となります。
この伝統工法で造られたものは「本美栖紙」と呼ばれ特殊な技法から小さな判しか造れず大変高価なものです。
また吉野地方以外で漉かれた美栖紙は「美須紙」と表記されます。
当店での増裏は、ほぼすべて美須紙で行います。本美栖紙には及びませんが決して安価な紙は使用しておりません。

本美栖紙

【宇陀紙】

原料は楮(こうぞ)で奈良県吉野で造られ、美しい紙面を持つ和紙です。
この紙は軸装の各部位を一体化させる総裏と呼ばれる裏打ちで使用します。
総裏打ちは、最後の裏打ちとなるため宇陀紙が掛け軸の裏面として現れます。
この紙は漉く際に吉野地方産の粘土質の石灰石を砕いた土粉を入れます。
これにより防虫、抗酸化作用が生まれ、また巻き癖がつきにくく、しなやかに仕上げられます。
吉野で漉かれたものは「本宇陀」と呼ばれます。
対し他の地方で漉かれた宇陀紙は「宇田紙」と表記されることが多いです。
当店ではすべて本宇陀を使用します。

本宇陀紙

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