当店が掛け軸や作品へ行う修復修理の様子を一部紹介しております。
経年劣化による作品への折れや裂けを修復修理します。
掛け軸などの修復修理を行う際は、まず作品を裏打ちしてある和紙に水分を入れ、和紙を取り除いていきます。
除去後、作品に付いた汚れの洗浄などが行われてから、裂けた部分を綺麗に繋ぎ合わせ作品の裏から和紙を貼り補強していきます。
裂けた部分が一部欠損し完全に繋がらない場合は補強した和紙が表に見えることがあります。
この場合、作品の地色に馴染むように和紙を天然染料で染色してから、補強します。
掛け軸など巻いた際に生じた折れは、裏打ち和紙を取り除き、新しい和紙で裏打ちした後、折れた部分に裏から2mm程に切った和紙を貼り補強します
特に痛みの激しい作品になると、折れが作品全体に細かく生じるため一つ一つ補強していく作業は根気のいるものとなります。
襖絵や屏風絵の穴あきなどの欠損部分は、絵の下地に使われている素材となるべく同じ素材の和紙や絹などで補っていきます。
補う部分の和紙などは、目立たないよう周りの色に合わせ、染色します。その後、必要に応じて岩絵具による補彩などを行います。
このとき、補彩する部分は補った和紙の部分だけであり、作品にまで岩絵具が付かないよう注意を払い行います。
書画に出た染みは、水や薬品による洗浄を行い除去します。
よく見られる染みは、経年変化で出てくる染みや水に濡れることで出る輪染みです。
輪染みは、濡れて間もないときは、簡単に落とすことができます。しかし時間が経つほど水では落としにくい染みになっていきます。
万が一、掛け軸などが濡れて輪染みが出たときは、日にちを置かずに処置することをおすすめいたします。
経年変化による染みとは、生活臭やホコリ、タバコの煙などを掛け軸や襖、屏風など生活空間に飾られた書画がフィルターのような役割をすることで
吸着した汚れです。この染みは、ある程度は水で洗浄することで落ちます。しかし中には、水で落ちにくく変化した染みもあります。
落ちにくい染みには、薬品を使った洗浄が選択肢に入ります。
薬品による洗浄は染みの除去に効果的ですが、書画へのダメージが多かれ少なかれあります。
また、経年による風合いがなくなるため、極力避けたい手法です。
まずは、水による洗浄を行い、染みの落ち具合を確認し、どの程度まで作業を行うかお客様と相談しながら進めていきます。
作品に発生したカビを殺菌洗浄します。
カビは水での洗浄では、取り除ききれません。消毒液による洗浄を行うことでカビ胞子を死滅させます。
カビによる害は作品の岩絵の具や墨の定着力を弱めることがあります。殺菌洗浄を行う際は、墨や彩色が落ちないように注意しなければなりません。
また、カビは殺菌洗浄後も跡が残る場合があります。カビが発生した状態で長く置くことなく早々の対処が必要です。
古い和本を一度分解し、修復修理した後、装丁し直します。
分解した後、各ページの折れや裂けを和紙で補強し、必要に応じて裏打ちを施します。
表紙は、補修後裏打ちを行い、厚みを整えます。すべての修復が完了したのち、各ページを綺麗に揃え和綴じ(わとじ)と呼ばれる綴じ方で
和本に仕立て上げていきます。和本の状態によっては、折れや裂けを和紙で補強するのみで済む場合もあります。